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部活前は体力温存の為に机で顔を伏せる私。
その私の耳元で囁かれる聞き慣れた声。
どうやら私は、無意識のうちに何度も溜息をついているらしい。
「玲奈はほんと溜息多いよね!授業中もずっとじゃん?よかったらこの美月お姉さんに話してごらん?」
そう声かける女子生徒は奥本美月(おくもとみつき)。
小学生時代からの親友だ。
美月は姉さん風を吹かせながら、自分の椅子を引きずって私の机と向かい合わせに置いた。
「お姉さんって同い年じゃん……」
顔をグッと起き上がらせて、美月に顔を向ける。
「いいから、言ってごらん?楽になるよ」
「何が悩みなのかよくわかんないから相談しようがない……」
「ふーん、それは困ったねー。内容がわからないんじゃアドバイスしようがないし。ってか玲奈って好きな人居ないの?そっち系の悩みじゃないの?」
その言葉に、私は肩をビクッとさせながら美月から目を逸らす。
「フフ、昔から解りやすい反応するよねー玲奈は。まぁそれが玲奈のいいとこなんだけど。で、誰よ誰よ!絶対に言わないから教えて!私と玲奈の仲でしょ?」
「わ、私は好きな人なんて居ないから!」
顔を赤くしながらそう言って席を立ち、カバンを肩に掛け、ペンギンのような走り方で教室を飛び出した。
『何?私ってそんなにわかりやすいの?』
手を頬にあてると、想像していたよりも熱かった。
『ポーカーフェイスになりたい……』
心の中でそう呟いた私の口から、大きな溜息が漏れる。
『とりあえず、部活に行こう』
立ち話をしている女子や馬鹿みたいに騒いでいる男子をすり抜けて、私は体育館横に並ぶ道場館へ向かった。
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