第3章:ジェラシー

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「もういい。俺の事なんて放って置いてくれ……」 私の挑発に乗ってこない龍博は、その言葉を残して階段を上がっていく。 「放っておけるわけないでしょ!!」 そう言って私は靴を脱ぎ捨て、階段を勢い良く登って龍博の右手首を掴まえる。 「離せ!」 龍博は手を大きく動かして私の手を振りほどき、自分の部屋に入って鍵を掛けた。 私は大きな溜息をつき、階段を降りてリビングへ向かう。 どうやら先程の溜息で『ピョン』と鳴ったみたいだが、メッセージを見るのは後だ。 リビングに入ると同時に、2日前の状態に母が戻ってしまったことは、部屋を見ると同時に解った。 溜まった食器や畳まれていない洗濯物。 母はソファの上で横になって眠っていた。 まるで充電が切れた人形のような顔で。 とりあえず夕食の準備が必要だと思った私は、食器を洗って簡単に出来る夕食の準備を始める。 冷蔵庫を開くと卵が沢山並んでいたので、親子丼を作ることにした。 卵をときながら、眠っている母の姿を見つめる。 『やっぱり、無理してたんだね……』 心の中でそう呟き、親子丼を完成させた。 その後も私はテキパキと味噌汁などを作っていく。
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