第3章:ジェラシー

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寝込んでいる母の耳元で「大丈夫?」と囁く。 母は唸るような小さい声を出しながらソファから起き上がる。 「玲奈……」 私の名前を小さく呼んだ母は、静かに私を抱きしめた。 「お母さん?」 「玲奈、あなたをこうやって抱きしめたのっていつぶりだろうね。いつの間にかあなたに触れる事もなくなって、いつの間にか心も離れて行った気がする……」 母は私の肩が濡れるくらいの涙を流しながら、私をキツく抱きしめる。 何故母が私を抱きしめたのかは解らないが、忘れていた母の温もりが心に浸透していく。 そして、気づけば同じように大粒の涙を流していた。 「お母さん?私、お母さんから気持ち離れたりなんかしてないよ」 そう呟き、私は母の背中に腕を回した。 子供の頃は抱きしめられるばかりで、こうやって抱きしめることが初めてなことにも気づいた。 『お母さん、寂しかったんだね。ごめんね』 心の中でそう呟き、私は母の震える身体をギュッと抱きしめた。 ーーーーひとしきり二人で泣いた後、親子丼と味噌汁を作っていた事を思い出す。 「あっ、お母さん、コレ食べて!龍博にも持って行ってくる!」 そう言ってエプロンをはずした私は、お盆に夕食を乗せて2階へ上がっていく。
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