第3章:ジェラシー

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「ほら、泣くほど悔しい事があるんでしょ?言いなさい、私が全部ケリつけてやるから!」 私は龍博を押さえていた手を離し、涙を見せないように丸くなる龍博の背中を摩る。 「無理だよ。あいつ等には逆らえないんだ……絶対」 「あいつ等って誰?言いなさい。私が一緒に家に行ってやるから」 「なんだよソレ、モンスターペアレントかよ」 「私は姉だからペアレントじゃないし!」 「じゃあモンスターシスターだ」 涙は既に乾いたのか、くだらない事を言い出した弟の身体をグイッと起き上がらせる。 「私は冗談で言ってんじゃないのよ?あんたをこんな状態にした、あいつ等ってのが許せないだけ。住所とかわかんないの?」 「住所なんて解るかよ」 「担任に電話すれば教えてくれるでしょ。あんたが虐められてたって事が公(おおやけ)になったら虐めの事実を隠したのか本気で知らなかったのかは置いといて、教師の立場もヤバくなるのは間違いない」 「姉ちゃん怖すぎ。そういうのが将来モンスターペアレントになるんだよ」 「あんたを守るためなら、モンスターでも怪物にでもなってやるわよ!」 「モンスターも怪物も同じ意味だし」 「うるさい!」 揚げ足を取る弟の頭を軽く叩き、昔の姉弟のやりとりを思い出す。 それと同時に、何故もっと早くこうしてやれなかったのだろうと言う後悔が胸を締め付ける。 もっと早くこうしていれば、弟はこんな姿にならなかったかもしれない。 壁を壊すのを待ってちゃいけなかったんだ。 龍博が壊せないなら、私が無理にでも壊して光の当たる所に連れ出さないといけなかったんだ。 私が、全部変えてやる。
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