第3章:ジェラシー

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『このタイミングでこのメッセージ来る?』 私は両手で髪の毛を掻きながら、ダイニングチェアーの背もたれに身を預ける。 頭の中で春藤と豊先輩の顔がルーレットのように交互に入れ替わる。 『これって浮気なのかな?豊先輩が好きとか言っておきながら、春藤の事も少し気になってる。いや、豊先輩とは付き合って無いからコレは浮気じゃない』 頭を左右に振りながら、再びスマートフォンに視線を落とす。 春藤のメールを読み直し、何て返信しようか考える。 『とりあえず、家に帰ってくる前に答えを出したように、日曜日は先に予定を入れた春藤を優先しよう。豊先輩には申し訳ないけど、来週か再来週にしてもらおうっと』 そう思いながら春藤への文章を作成していく。 【お疲れ様。日曜日大丈夫だよ!負けたもんは仕方ないし。ちゃんと水族館に同行しますので心配なく。あと、彼氏は居ませんので】 そのメールを送信してから豊先輩へのメールを作成する。 【こちらこそ今日はありがとう御座いました。もし先輩さえ良かったら、また一緒に帰ってください。それと、日曜日の事なんですが、前から入っていた予定があるのでどうしても行けません。また来週か再来週辺りで予定を立てれたらなって思います】 春藤に送るよりも2行も多いメールを送信する。 『とりあえず日曜日よりも土曜日だ。ちょっと過保護過ぎたかな。でも、あぁでもしないと絶対アイツは部屋から出てこなかったはず……』 私の選択が間違って無かったのかどうかなんて解らない。 ただ、私も含めて少しずつ家族が変わってきているような気はする。 それが、良い方向なのか悪い方向なのかは解らない。 ただ、今を変えるのは今の行動しかない。 過去は変えれないけど、未来は変える事が出来る。 『あっ、この言葉いいな!』 自分の脳裏に浮かんだ言葉を溜息デイズのメッセージとして使おうと打ち込んでいく。 土曜日、龍博にとってはもちろん、私にとっても、大変な事が起こることを、この時の私はまだ知らなかった。
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