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「いえ。あれは甲斐君の実力ですよ。大した助言はしてませんから」
頭を下げた俺を、ちら。と見ただけで、先輩を見ている。てか、ガン見?じーっと先輩を凝視している。
もしかして、噂してたの、聞こえちゃったのか?と先輩の心配する。
すると、先輩が頭を下げる。
「ちょっと声、デカかったですかね。すみません」
視線で自分に誹があると思ったんだろう。心当たりもある事だし。
「いえ。……私が言うと、どうしても注意している様にとられるんですよね。本当にただ、楽しそうだったので声を掛けただけです。ほぼ貸切ですし、あちらももっとウルサイですから…」
三城課長が指したあちら、とは今まで課長が座っていた周辺の課長や部長の席だった。1課の上原課長が自分より上の人達に酒を注ぎまくっているらしく、一際、がはがはと大声で笑っていた。
ゴマスリ能力は流石と言うしかない。あれだけは見習っても良いかも知れない。
「逃げてきたんですか?」
「どうぞ、どうぞ。良かったらココに座ってください」
先輩の隣、つまり俺との間を空けると、では。と靴を脱ぎ、座敷に上がってきた。
「課長、飲んでます?あまり顔色も変わらないですが…」
そう言いつつ、三城課長にグラスを渡し注ぐ先輩。
「飲んでますよ?上原課長が注ぎますから、仕方なく」
「ぶっ、し、仕方なく、ですか?」
「はは。課長も結構言いますねー」
ふ。と声に出さずに、それでもリラックスしているような三城課長の笑顔が観られると、先ほどまで冷たいだのなんだのと言っていた先輩も、課長と共に笑い出した。
他の1課の人達も、じわりじわりと集まってきた。
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