≪飲み会≫

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話してみると、三城課長が仕事以外ではそんなに気取った人物では無いのが、良く分かる。 営業部は個々に終わる時間がまちまちで、あまり自分の上司と飲みに行く機会もなく、他の課と飲みに行くなんて、まず無い。営業部全体の飲み会になるとこの会社は上下で分かれるため、2課の者が、1課の課長とこんなに親しく話した事がなかったのだ。 「俺、この間の事、本気だったんですよー?」 先輩が、多分先ほど言っていたことであろう事柄を穿り返してきた。 「この間の、ですか?将晴くん、何かありましたっけ?」 どきり。としたのは、多分自分だけではないだろう。一瞬、しん。としたから。 三城課長が鈴木先輩をわざわざ名前で呼んだからだ。部下を名前を呼ぶ人なんて、他の課でも居ない。 「あー、ひどいなぁ。俺、結構傷付いたんですから。好きだって言ったのに…」 「仕事中に言う事ではないでしょう?それに、先ほどは甲斐君を口説いていましたよね?見てましたよ」 ふふ。と不敵に笑う三城課長。 「将晴くんは誰でも良いんですねー。そう言う人は、尚更お断りです」 ちらり。と俺を見るが、すぐに先輩に視線を戻した。 俺の事を口説いてた?ああ、1課に来ないか?って事か。あれも口説いてたって言うのか?でも三城課長まで聞こえていたとは思えないけど。 「えー?三城課長って、同性もイけるんですか?」 酔いついでに、大胆な事を聞く、同僚。 「イけませんね。お断りします」 きっぱり。 気持ち良い位にすっぱり。 すると何故か先輩と共にがっくりする面々が、周りに数名。いや、がっかり する人、多過ぎないか?そんなに皆、男イケるんだろうか。 「やっぱり女性限定ですかー。恋人はいらっしゃるんでしょうねー」 「課長、モテそうですもんねぇ」
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