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「でも、ぽちは1課でも良いだろ?なんたって三城課長も要るし」
「うん!」
思わず即答した俺。
だって、どう考えたって、2課の課長の下で働くより、三城課長の下で働きたい。そんで……。
「なに、即答して、にやにやしてんだよ。やらしーなー。あ、でもダメだぞ。俺が押しても引いてもビクともしなかったんだからな、うちの課長」
1課の先輩は何でもありっぽい。まあ、営業なんて柔軟な頭が無いと勤まんないだろうけどな。中には接待に食事よりもそっちを強請る人も居るとか聞いた事あるし。
「えー!先輩、それ無謀ですよ。三城課長ってすげぇ偏見強そうじゃないですか?」
「おう、ばりばりだった。こうだぜ、こう」
と言いながら独り芝居を始める先輩。
「課長、今度の休日、何か予定ありますか?」
ここで先輩はくるり。と反対を向く。
「いや、特に無いが」
再び、くるり。と反対を向く。
「なら、食事にでも行きませんか?俺、美味いトコロ知ってるんですよ」
「え!?美味いトコ?」
「こら、ぽち。黙ってろって」
まだ、先輩の独り芝居は続いている。
「何故君と行かねばならないんだ?」
「俺、課長の事好きなんで」
「そういう好意は拒否する。同じ趣味のヤツ同士でやってくれ」
「うわ…、ひっでぇ。同じ趣味って、趣味じゃねーよ」
さっき俺を止めたくせに、今度は自分が口出す同僚。
そりゃあ、課長の言う事も分かる。俺だって好みじゃない女性に言い寄られたっていい気分になる事無く断るし、男性になんて言い寄られても迷惑なだけで、断るだけじゃなくて、逃げるし避けるよな。
うん、普通はそういう嗜好が無いと、好意さえ迷惑だし関係を持とうとも思わないもんだよな。
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