夏はその日、終わった。

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春日の細い指先が、つ、と背中をなぞっていった。 決して摩擦熱を生まない、たどたどしく弱々しいひと筋。 それが一気に、円佳の熱を上げた。 ――こんな、ところで。 庇護欲でも姉妹愛でもない。 ずっと目を背けてきたそれは、情欲。 口には出せなかった。 許されないと思っていた。 否――円佳は自身に、それを赦そうとしてこなかった。 「先輩、私のこと、お嫌いでしょう」 繰り返された、同じ質問。 今度は彼女が答えを求めていないことを、円佳は分かっていた。 小さな身体が抱きついてくる。 体温を分け合おうとでもするように。 もう冷えてなどいなかった。 そんなことを、円佳の身体は必要としていなかった。 なのに。 ぎゅっと抱きついてきた、背の低い春日の顔が寄せられたのはちょうど円佳の胸元だった。 漏れそうになる声を、円佳はぎりぎりで耐えた。
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