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越えてはいけない。
その一線を、飛び越えてはいけない。
「――嫌い、だよ」
掠れた声で、円佳は呟いた。
華奢な身体を力いっぱい抱きしめて、頭頂部に熱い吐息を吹きかけながら。
零れ落ちた感情は互いに筒抜けだった。
けれど2人は、決してそれを口には出さなかった。
穢さない。
壊さない。
求めるものが同じでも、願うことも同じだったから。
死にかけた電灯は最後まで点滅を繰り返していた。
雨が止む前にそれが力尽きていたら、彼女たちはもしかしたら越えることが出来たのかもしれない。
どちらが幸せなことだったのかなど分かり様がないのだ、誰にも。
雨が止んで。
2人の夏は、その日、終わった。
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