夏はその日、終わった。

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越えてはいけない。 その一線を、飛び越えてはいけない。 「――嫌い、だよ」 掠れた声で、円佳は呟いた。 華奢な身体を力いっぱい抱きしめて、頭頂部に熱い吐息を吹きかけながら。 零れ落ちた感情は互いに筒抜けだった。 けれど2人は、決してそれを口には出さなかった。 穢さない。 壊さない。 求めるものが同じでも、願うことも同じだったから。 死にかけた電灯は最後まで点滅を繰り返していた。 雨が止む前にそれが力尽きていたら、彼女たちはもしかしたら越えることが出来たのかもしれない。 どちらが幸せなことだったのかなど分かり様がないのだ、誰にも。 雨が止んで。 2人の夏は、その日、終わった。
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