夏はその日、終わった。

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延々と広がる田畑。 その隙間にぽつりぽつりと民家。 ひたすらに続く一本道。 一定の間隔で訪れる、やる気のない古びたバス停。 バスは1時間に2本――どの時間帯でもそうだ。 通勤通学で利用者が増える時間も関係なしに。 そもそも住民が少ない。 どれだけ1本のバスに集中しようが、満席になることのない寂れた路線だった。 何もないその道のバス停とバス停のちょうど真ん中辺りに、唐突にぽつんと現れる電話ボックス。 誰が誰のためにこのボックスを設置したのか、町の七不思議のひとつだった。 撤去するにも費用がかかるから放置されているに違いない、というのが、周辺住人が行き着いた結論である。 円佳は、その無意義な電話ボックスの中で携帯電話を弄っていた。
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