夏はその日、終わった。

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この中へ踏み入れた者が何年もいなかったことを証拠付けるかのように、ボックスのドアと言わず内外至る所に蜘蛛の巣があり、そのドアは円佳が押し開ける際にはひどく軋んで抵抗し、開けたと同時に何とも言えない淀んだ空気が逃げ出していった。 入ってみれば中は虫の死骸だらけだ。 円佳は憂鬱なため息を吐き出した。 ボックスの電灯が切れかけていてチラつくのも目障りだった。 今にも死にかけたその電気が点滅するたびに鳴る音は、まるで断末魔の叫びのように不気味に耳につく。 いっそ潔く消えてしまえば良いのに、と、円佳は手の中の携帯から外した視線を一瞬だけその電灯にくれた。 こんな電話ボックスにも、不思議なことにデリバリーヘルスやテレフォンセックスの類の広告シールがベタベタと貼られている。 これを貼りに来た人は一体どこから現れてその無意味な作業をしていったのだろうと、数枚の広告の謳い文句を流し見ながら円佳は少しだけその人物を憐れんだ。
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