夏はその日、終わった。

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目の前には使えるかどうかも怪しい公衆電話、手の中には携帯電話があるが、少女は別に電話をかけようとしているわけではない。 居心地も気分も悪い電話ボックスの中に彼女が足を踏み入れざるを得なかったのは、天気予報を裏切った季節遅れの夕立のせいだった。 もうふたつ先のバス停まで行けば申し訳程度の屋根がある。 なんとかそこまで、と自転車を漕いだが、どんどん強くなる雨足についに音を上げ、雨宿りのために仕方なく彼女はここへ辿り着いた。 夕立だ、そう長く降り続けることもあるまいと。 辺りは既に暗くなっていた。 それがこの土砂降りのせいなのか、それとももう陽が落ちるのが早くなってきているからなのか、今の時刻を確認するのも億劫な投げやりな気分だ。 濡れた制服が肌に張り付いて体温を奪っていく。 長袖を出さなければと朝は思ったが、服のせいでこう冷えるならば半袖はむしろ幸いだった。 それでも不快には変わりないのだが。
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