夏はその日、終わった。

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雨に濡れた春日から、ふわりと彼女の香りが昇って鼻腔を刺激した。 2人中に入る設計ではない。 電話ボックスの中は、狭かった。 ――近い。 くらり、と目眩がした。 体温が下がっている。 濡れた服が、熱を奪う。 ドアを開けた隙に入り込んだ、冷えた空気も。 風邪でもひきそうだ、と、円佳は小さく身震いをした。 「すみません、円佳先輩」 「……何が」 春日は高校の後輩だ。 背が高く男みたいに肩幅の広い、そのくせ骨ばって肉付きの悪い見るからに不健康そうな自分とは対照的だった。 小さくてふわりと柔らかそうな、健康な女性らしい丸みのある優しいフォルム。 それが、初めから気に食わなかった。 男みたいな見てくれに対するコンプレックスを払拭するため高校入学と同時にばっさりと切って以来の円佳のショートヘアは、彼女のコンプレックスを逆に助長しただけだった。 目の前では春日の長く艶のある髪が、水を滴らせて言い知れない色香を放っている。
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