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プロアマ関係なく戦い、日本一のサッカーチームを決める天皇杯の三回戦。
対戦相手は、Jリーグの年間王者だ。
ベストメンバーではないにしろ、全員がプロの激戦のピッチに立った事のある選手で、俺達が挑戦者である事に変わりない。
試合はもつれにもつれた。
だが、最後の想いはゴールマウスに吸い込まれる事なく、俺達は夢の舞台を後にした。
最後まで、あの緑の上で走っていたかった……。
「すげー悔しいけど、終わっちまったもんはしょうがねーだろ。高校選手権は俺が決勝点を決めて、優勝カップをプレゼントしてやるから」
大きな手が、俺の頭に触れる。
「だからさー、もう泣くんじゃねーよ」
「泣いてねぇ……」
「じゃあ、これは何だってんだ?」
頬に伝う二本の筋を、長い指がすくう。
「あ、汗だ……」
プッて吹き出したそいつは、また大きな手を頭に戻す。
「ショウさぁ、今、すっげー色っぽい顔してるって分かってんの? 押し倒して欲しいわけ?」
「なっ……カイト、てめぇ何言ってやがる」
ここは、試合が終わったばかりのスタジアムの通路だ。
いつ誰が通るかも分からない。
「ははは、顔真っ赤っか。かーわーいーいー」
「てめぇの冗談、質が悪すぎんだよ」
わりぃわりぃ、と端正な顔をクシャクシャにして笑うカイト。
汗がキラキラ光っていて、目の前に太陽があるみたいだ。
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