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壱
翌朝、淳は貴子に家事を言いつけた。
文也は管理人がいるためその必要はない、と断ったが
淳の、言葉だけは柔らかいものの、頑なな態度に
頷くしかなかった。
文也と淳は貴子があり合わせで用意した朝食を取ると
近くの街に用事があるという文也に同乗し
淳は故障車の手続きと宿のキャンセルに向かった。
爽はまだ寝ているようで昼過ぎになっても
姿を見せなかった。
『そういえば、昔からそうだったわ』
自治では泊まり込みの作業も多かったので、
寝起きの悪い爽には皆が手を焼いたものだ。
ふふ、と食器を洗う手を止めて
貴子は周りを見渡した。
この別荘にも自治の中心メンバーだけで
何度か避暑に来た。
想い出が溢れる。
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