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壱
季節が一巡りし、肌寒さを覚える頃
恒例となった歩との会食に向かう。
目的地は貴子がプレートマットなどを頼まれている
会員制レストランだ。
そこはまるで時を止めたかのように
佇まいも装飾も大きく変化する訳ではないが
移り変わる庭の景色や飾られる花が穏やかに季節を告げる。
その心地よさに惹かれるのもあるが
次の季節のイメージを膨らませるために
こうして2,3か月に一度ここへ訪れる。
コース料理を頼み、シャンパンの代わりに
スパークリングウォーターで口を潤す。
極上の食事と最上の時間を楽しみ、デザートに
頬を緩ませた時、小さな振動音が聞こえる。
歩は、ごめんね、と断って、携帯を持って
フロアを出て行く。
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