通天閣に登ったら

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「重い関係って、ほんなら美春は、健介のこと好きなくせに、結婚はしたくないってことなん?正直にいうけど、 小学校から美春のことずっと見てきて、今までこんな一途な美春、見たことないで。たぶん、これからももう、誰かとこんな風になることって、ないんちゃう?それでも、健介と結婚したくはないん?重いって、思われたくなくて?」 わたしがつい、美春に正直な思いを吐き出すと、美春はまつげエクステで三割増しになった大きな目を見開いた。 「結婚、したくない、ってわけじゃないで。そんなん、好きなんやから、一緒にいたいの当たり前やん。やけど……」 「やけど、なんなん?」 「あたしと健介ってな、出会ったときも、付き合ったときも、付き合ってからも、ずっと、健介が押しまくってきてたやん。健介があたしのこと好きで、あたしの顔が死ぬほどタイプで、好きや好きやってもう、しつこいくらいやったやん」 美春はローソファーに三角座りをして、小さな口を尖らせながら言う。わたしは「うん、そうやったな」と頷いて、美春の隣に腰かけた。 「それであたしも、健介のこと本気になって、健介やったら別に、健介ひとりでもええかって思って」 自他共に認めるモテ女である美春は、一人の男ときちんと付き合ったこと自体初めてだ。悪気もなければ男たちも皆美春と付き合えるなら何でもするような男ばかりだった。見事に誰のことも傷付けず、気まぐれな天使みたいにひらひらと男の間を飛び回っていた美春。 「結婚するときも、きっと健介が、サプライズで指環かなんか用意してさ、結婚してくれって言って、あたしがええよって、言うもんやと思ってた。 それやのに、なんで? 赤ちゃん出来たら、今度はあたしが不安にならなあかんなんて、おかしいやん。なんで、結婚前に赤ちゃん出来たってだけで、立場が逆転するん? なんであたしが、健介が結婚してくれるかどうか不安になるん?あたしは、健介に結婚、してもらう立場なん?女やから?妊娠してる間、働かれへんようになるから?養って欲しいから?あたし、健介に、養って欲しいなんて思ってない。養育費出せとか思ってないねん。責任取れとかも思ってない。ただ、健介が好きなだけやのに」
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