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美春の言葉を聞いて、わたしが思い出したのはやっぱり小さい頃の、わたしと美春の記憶だった。
美春もわたしも母子家庭で、いつも放課後はふたり一緒に過ごしていた。
ほんものの姉妹みたいに、楽しいことも悪いことも一緒にやって、お互いの恋も、付き合った男の顔も全部見てきた。
小さい頃、お互いに遅くまで働く母親を待ちながらお互いの家を行き来して、美春とふたりで過ごした時間。どちらの家庭も裕福ではなかったし、ゲームもおもちゃもほとんどなくて、だけどなぜか、美春といるといつだってわくわくした。
父親がいなくてもちろん寂しい気持ちはあったけれど、父親がいなくても子どもはそれなりに育つことを知っている。
美春の言葉はそのままわたしの真吾に対する気持ちにも当てはまっていた。
わたしも、真吾に対して養って欲しいとか、例えば妊娠したとして、なんらかの責任を取って欲しいとか、幸せにして欲しいなんて思っていない。
真吾が好きだから、一緒にいられたら嬉しい。
だけどそれは、自分の子どもの父親になって欲しいこととは別の感情だ。
真吾は優しい。真吾は頼りになるし正義感が強くて思いやりがある。
だけど真吾が素晴らしい父親になるなんて、そんな保証はどこにもない。
父親なんて、なってみないとわからないギャンブルみたいなものなのだ。
父親の存在はもちろん大切なのはわかるし、経済的にも母子家庭は裕福とはいえない。
だけど世の中には、子どもにとって素晴らしい父親と同じくらいか、もしくはそれ以上の割合で、いないほうがいい父親だって存在する。
そのことも、わたしと美春は経験上、嫌というほど知っているのだ。
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