通天閣に登ったら

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真吾はほんものの正義のヒーローだ。 仮面ライダーにもなんとかレンジャーにも負けない、本物のヒーロー。 厳しい日々のトレーニングを欠かさないのも、ロープ一本で高い塔に楽々登ることができるのも、ごつごつした二の腕も金剛力士像みたいな胸板もすべてが人命救助のためのものであり、真吾はけっしてわたしだけの王子様なんかじゃない。 そう自分に言い聞かせておかないと、つい勘違いしてしまいそうになる。 〈よう言うわ!もやしんごのくせに〉 正義のヒーローに対してこんな無礼極まりないメッセージを送りつけてしまうわたしは、間違いなくヒロイン失格だ。 〈お前、今度会ったら覚えとけよ!〉 こんな風にヒーローを怒らせて安心するのは悪趣味だが、真吾が完璧な王子様じゃないことを、確認せずにはいられない。 〈仮面ライダーやなくて、やっぱりドラえもんかな。真吾が感動して泣くとこ見たいし〉 〈はいはい。涙もろいんはお前やろ?ほんなら次の休みはドラえもん映画見てどら焼きでも食おか〉 〈うん〉 真吾の前で、泣いたのは一度だけだったはずなのに、真吾はわたしが涙もろいことも、あんこに目がないことも知っている。 〈ほんならまた〉 きっと真吾はわたしの嘘なんて簡単に見抜いてしまうだろう。美春の決心を無駄なものにしないためにも、気持ちを引き締めなければ。 〈うん。また〉
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