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通天閣が見下ろす、ここ大阪は、正真正銘わたしの生まれ育った街だ。
つい最近、通天閣をはるかに超える新しいシンボルタワー、あべのハルカスがオープンしたばかり。
海遊館やユニバにはとうの昔に飽きてしまった新しいもの好きの関西人。 待ちに待ったオープンに、大阪じゅうが舞い上がった。
いくらハルカスに内閣総理大臣が来ようとも、わたしはやっぱり通天閣が好きだ。
スタイリッシュさのかけらもない、下品で雑多な感じといい、かの有名な串カツ屋をはじめとする足元のゴチャゴチャした雰囲気といい、まさに大阪。これぞ大阪。
ハルカスがオープンした今は、さびれるどころか「通天閣から見るハルカスが一番美しい」と謳い、プライドゼロの便乗商売を堂々とやっているあたり、図太いというか何というか。そんなところもひっくるめて、とにかく大好きなのだ。
◇
「あやせんせい、おはよう!」
三歳児クラスの女の子、おかっぱ頭が可愛いゆのちゃんが、狭い保育園の門を走り抜けてわたしに抱きついて来る。
これがそう、今日の朝七時のことだ。このときはまだ、わたしの心は穏やかだった。
寝起きでぼやけた頭の中が、子どもたちの元気な声ですっきりし始める。いつも通り、爽やかな一日のスタートだった。
「おはよう!ゆのちゃん!今日は朝ごはんのこさんと食べてきた?」
「うん、たべたで!ゆのな、ごはんつぶものこさんとぜーんぶたべた!」
得意気な表情のゆのちゃん。ゆのちゃんのお母さんは職場が遠く、そのためいつも登園は朝の七時ぴったりだ。早朝や延長の時間外保育をおこなっている保育園は、市内とはいえそれほど数は多くない。
「偉いやん!さすがパンダ組さんやなぁ!」
「うん!もうひよこぐみちゃうもん!ゆの、おねえさんやから!」
小さな体で立派な関西弁を話す子どもたち。母親はみんな働いていて忙しく、けれども園の方針で、朝ごはんは必ず食べて来させること、というのが数少ないルールのひとつ。
園周辺の治安の悪さでは群を抜いているにもかかわらず、子どもたちはみんな素直でたくましい。
ここが私の職場である、通天閣保育園。雑多な街のど真ん中にある、小さな小さな保育園だ。
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