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いつものジャージにいつものTシャツとパーカー。シャワーを浴びて乾いたばかりの長い髪は下ろしたままで、自転車を走らせる。
夜風が少し肌寒く感じられるけれど、お酒が入ればちょうどいい感じになるだろう。
約束のたこ焼き屋には10分で着いた。
店先には赤ちょうちん。お持ち帰り用のたこ焼きを猛スピードでくるくるひっくり返しながら焼くオッチャン。ソースの匂いが鼻をくすぐる。
「あ、来た来た。おーいあや!こっちこっち!」
赤いのれんの向こうで美春が手を振っている。店内にはテーブル席が三つとカウンター。
客は美春と同じテーブルに男が二人。他のテーブルのグループはもう少し若い。カウンターは空いていた。
美春はピタッとラインの出るニットのワンピースにブーツ。気合いが入っているようにも見えるがいつものことだ。アパレルの店長をしている美春は、彼女曰く、無駄に服を持っている。
こっちに気がついた美春の連れの男性客二人が揃って立ち上がる。かなり鍛えられた雰囲気の身体つき。それに二人とも背が高い。
複数の男と女一人で美春がお酒を飲んでいることはしょっちゅうで、そこにわたしが呼ばれるパターンは多いのだけど、美春はいつも、それは合コンではないと断固として言い張る。
どこで出会うのか知らないが、弁護士や医者からプロのサーファーまで遊び相手の男には事欠かない美春にとって、あくまでもそれは単に男友達と飲んでいるに過ぎないらしい。
今日の二人は鍛えられた体型と焼け気味の肌の感じからして、スポーツ選手かもしくはジム通いが趣味の営業マンとかそんなとこか。
面食いの美春の男友達は基本的に男前ばかりだから驚きはしなかったものの、二人とも近くで見るとかなりのイケメンだ。
「紹介します。親友の大迫あや。同い年で、保育園の先生。ちなみに三年くらい彼氏おらんよな?」
な?と美春がわたしと男二人を交互に見ながら言って、あははっと笑う。
「てか、ホンマにジャージで来たん。しかも健康サンダルて、オバハンか」
「ジャージでいいゆうたん美春やん。近所のたこ焼き屋まで来るのになんでわざわざ化粧しなあかんの」
イケメン相手にジャージすっぴんでも何とも思わなくなったのはいつからだろう。彼氏が三年もいなかったことに、美春に言われて気付いたわたしには、女子力の欠片さえも残っていないのではないだろうか。
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