第1章

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 パウエルは考えました。どちらも悪いパトリシア というわけではないが、片方は悪魔のイタズラでは。 しかし、気立ての優しい二人のパトリシアの区別は パウエルでさえ全く、見破れませんでした。  よもやこの眼帯のせい、気の迷いでだろうか。  そんな風に考え始めた頃、ある秋になろうとする 静かな虫の音を聴き、お酒を飲んでいた時です。 ふと、片方のパトリシアの左目のマブタの上に 小さな小さなテントウ虫が、とまったのです。  そちらのパトリシアは左目を、眼球をグリグリして パチパチとまばたいて、テントウ虫を追っ払いました。 その瞬間パウエルは、そちらのパトリシアを目掛けて 兵隊の槍で突き刺したのです。  ばったり倒れた片方のパトリシアにも気付かずに もう一人のパトリシアは驚いて、パウエル、急に どうしたの?と訊ねましたが、パウエルは黙って。 という合図を指で示して、動かないように手で 生きている方のパトリシアを、守りました。  殺され倒れたパトリシアは、みるみる内に煙になり 細長い蛇のような姿になり、床の隙間へ逃げ込もうと 大急ぎで滑りましたが、パウエルはチャンスとばかり 床へ槍で一撃して、見事に仕留めました。  その不気味な白いヒモのような化け物をみて震えて パトリシアはこれは、何がおきたのでしょうか。 パウエルに寄り添って、訊きました。  パウエルは次のように話ました。帰宅すれば 実はオマエが二人に見えたのだ。最初は気の迷い。 そう思っていたが、化け物になった方の、いわば オマエに化けていたモノの、目の上にテントウ虫が 軽くとまったのだ。  オマエも知っていると思うが、テントウ虫は お天道様の使いだ。それを拒むというのは夜に 棲む化け物に違いない。そう思ったので 突き殺したのだ。予想通りコレは東洋の化け物で 【応声虫】という。油断させて体に入り込んで 中から食い殺してしまう、蛇に似たお化けだよ。  それを聴いて、パトリシアは安心するだろうと パウエルは思った。だが彼女はますます震える。 どうしたのだい?優しくパウエルは訊いた。  実はアナタがお留守の間に左目に眼帯をした アナタに化けたモノが来たのです。怖くて怖くて。 もし、あれが私を狙ってやって来たのなら。  次にアナタがお城へ行ったときに、アレが来たら。 私はどうすれば。そう思うと、怖くて堪りません。  そうか。それではね、オマエはテントウ虫の
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