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彼女、エルテシアが叫び両手を天へかざすと魔法陣が淡く輝き、雲一つない快晴の青空を突如現れた暗雲が視界を覆い尽くし、隙間からは光と共に雷鳴が鳴り響く。
穏やかだった風も逆巻き、その場はあっという間に惨状へと変貌を遂げていく。
ローブの集団からも時折悲鳴や狼狽する声があがる。
しかしエルテシアは風に吹かれようとも天を仰ぎ続ける。
―ここで自分が恐れてはすべてが水の泡、それだけはあってはならない!
彼女は歯を食い縛り耐える。
そしてそう時間も経たぬ内に結果は現れた。
石碑の上部に人一人が入れる程の大きさの虹色に輝く球体が現れ、ゆっくりと着地する。
着地した球体から一瞬眩い光が放たれ段々と人の形を形成していく。
そして―!
「っててて…んだよここは?」
現れたのは薄汚れた服にボサボサの黒髪にだらしなく無精髭を生やした二十代後半と思われる胡座をかき頭をボリボリとかきむしる細身の男だった。
―勇者のイメージに最も無縁そうなのが来た…!!
口には出さなかったもののその場にいた全員の勇者への第一印象は最悪だった。
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