アンチロヂック・ドラマシアター

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「学級委員。」 呼びとめられて振り返る。 担任の東先生が廊下に立っている。 放課後で人はまばらだ。 「今週、保護者懇談会あるだろう。」 「知ってます。」 「あの壁新聞のさ、体育祭の時のホームビデオ撮影に関して保護者同士がもめた話、別の記事と差し替えてくんない? ほら、もう学校側としてはさ、終わった話で刺激したくないんだよね。 なんでもいいから、どうでもいい記事であのスペース埋めといて。頼むよ。」 わかるだろう? と言いたげな気安い顔を見上げる。 私はあなたの便利な部下ですか。 まあ、先生にとって学級委員なんてこんなもの。 「わかりました。どうでもいい記事、書いておきます。」 「望月~。」 そんな言い方ないだろう? とまた変に馴れ馴れしい声を出す。 勝手に差し替えたら、取材して書いた新聞委員の子に恨まれるだろう。それとなく大人の事情を伝えて説得する、そのあたりの調整役も私ということだ。 私は先生に試すような視線を向けた。 笑顔できりだす。 「そのかわり先生? 女子バレー部の加藤先生と話つけてもらえませんか? 十月の体育館の使用についてですけど。女子バレー部が『大事な試合がある』ってねじこんだらしいですね。『大事な試合』ってぶっちゃけ、二年生主体の新人戦のことですよね。 私たち演劇部はまだ三年生が現役なんです。これからが本格的な活動シーズンなんですけど。 そのへん、きっちり筋通してくださいね。」 ギブアンドテイク。 私は間違ってない。
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