アンチロヂック・ドラマシアター

3/7
前へ
/7ページ
次へ
「望月、学園祭の実行委員やれよ。俺とお前で委員長と副委員長やろうぜ。あと適当に裏の分かる奴声かけといたから。」 肩に手をかけてくるのは原田。まるで私が、自分の手駒であるかのような口ぶりで言う。 中学の時からの腐れ縁だ。征服欲の強い男で、生徒会役員もやっているくせに、まだ何か思い通りにしたいらしい。 「何がしたいの?」 「今年ちょっとやりたいことがあってさ、どうしても予算と教室もらいたいんだよね。多数決、有利にしとけば楽勝でしょ。」 野心ありげな目を輝かせる。 「じゃ、私が引き受けたら、来年度の部活動費の予算折衝の時、演劇部の担当を私が指名する生徒会役員にしてくれる?」 「へぇ、活動予算ぶんどるの? 演劇部にずいぶん必死だな。」 「交渉成立、だよね。」 私は念を押して、歩み去る。 学級委員はじめ、各種まとめ役の常連。 理知的でけっして感情的にならない優等生。 望月 シイナ。 ―――あれ、それって誰の名前だったっけ? つねに模範解答を探す人生だった。 どうしたいか、ではなくて、どうするべきか、を考えた。 気づけば先のないレールの上を、もう無傷では降りられないスピードで走り続けていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加