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「望月、学園祭の実行委員やれよ。俺とお前で委員長と副委員長やろうぜ。あと適当に裏の分かる奴声かけといたから。」
肩に手をかけてくるのは原田。まるで私が、自分の手駒であるかのような口ぶりで言う。
中学の時からの腐れ縁だ。征服欲の強い男で、生徒会役員もやっているくせに、まだ何か思い通りにしたいらしい。
「何がしたいの?」
「今年ちょっとやりたいことがあってさ、どうしても予算と教室もらいたいんだよね。多数決、有利にしとけば楽勝でしょ。」
野心ありげな目を輝かせる。
「じゃ、私が引き受けたら、来年度の部活動費の予算折衝の時、演劇部の担当を私が指名する生徒会役員にしてくれる?」
「へぇ、活動予算ぶんどるの? 演劇部にずいぶん必死だな。」
「交渉成立、だよね。」
私は念を押して、歩み去る。
学級委員はじめ、各種まとめ役の常連。
理知的でけっして感情的にならない優等生。
望月 シイナ。
―――あれ、それって誰の名前だったっけ?
つねに模範解答を探す人生だった。
どうしたいか、ではなくて、どうするべきか、を考えた。
気づけば先のないレールの上を、もう無傷では降りられないスピードで走り続けていた。
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