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『安いなりの理由があるんだろうけど、借り手が良いって言ってるんだから契約しちゃえばいいじゃん。別に理由なんてどうでもいいし』
淹れてもらったお茶だって冷めてるし、何より私はこのあと二時間かけて地元に戻り夜の七時からバイトがあるんだよ。
物件を見に行くなら見に行くで早くしてほしいんだ。
『あのぉ…僕が言うのも変なんですが…本当にここだけは…』
『じゃぁ何?この駅の近くでこの値段の物件他にあるの?』
『いや、それは…ないですが…』
じれったい、こんなやり取りをしてる時間が無駄だっての。
『もぅ!あんたじゃ話にならないから上の人を呼んでよ!私はココを借りたいの!』
親切心で止めてくれてるのかもしれないけど、こういうのを小さな親切大きなお世話って言うんだと思う。
『…僕は止めましたからね。何かあっても苦情を言わないでくださいよ』
鈴木だか木村だかは諦めたのか、少し不機嫌な口調でそう言った。
『言わないわよ』
と、これがあの部屋を借りる前の流れ。
2ヶ月後、私はその部屋へと引越した。
鈴木だか木村だかは仕事を辞めたらしく、私は不動産屋に鍵を貰いに行きあの部屋が安い理由を知った。
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