第1章

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「お化け…?」 「えぇ。佐藤から説明ありませんでしたか?」 新しい担当は縁無しの眼鏡をかけた40代ぐらいの、いかにも仕事ができそうな女性だった。 てか、あいつの名前佐藤だったのか。 「安けりゃ何でもいいって言っちゃったので、理由なんてどうでもよくて聞いてないです」 「そうでしたか、事前に確認しておけば良かったですね…。もう今日から契約になってますが、大丈夫ですか?」 女性は心配そうな面持ちで私の顔を覗き込んだ。 「お化けが出る事が?」 「そう…ですね。あの部屋を借りたお客様、全員が同じ理由で退居されてますので…ただ、今から別の物件を探すとなりますと…」 「あーあー、大丈夫です!全然問題ないです」 私は女性の言葉を遮り笑顔でそう言った。 お化けなんかより、生きてる人間の方がよっぽど恐ろしいと思うよ。
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