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親父は、奴らのことを「餓鬼」と呼んでいた。
確かに、裸で、ガリガリにやせているくせに、腹だけが異様に膨れているところは、歴史の教科書なんかに出てくる、餓鬼の絵に似ている。
でも実際は、奴らは全く別の世界からやってきた、仏教でいうところの餓鬼とは、ぜんぜん違うものなのだ。
奴らの肌は、汚らしいまだらになった灰色で、動きは、ゾンビみたいにのろくさしている。
目は、眼球が腐って落ちてしまったのか、それとも、最初からなかったのかは知らないが。
本来目があるところには、ただ黒い大きな穴がぽっかり空いているだけで──それが、何ともブキミだ。
目がないくせに、一体どうやって物にぶつからないで歩いていられるのか、エサを探すことができるのか……奴らについては、いまだにわからないことだらけだが。
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