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「テレビが出回った頃、国民の総白痴化を嘆いた評論家がいた。いや、白痴ってのは差別用語か。しかし当りだな。え? 今のテレビは誰と誰がくっついた離れた、それを追いかけるしか能がない。ふん、知ったことか。以前、音痴歌手が増え歌番組が消えたようにバラエティとかいってタレントのバカふざけもそのうち消えるか。次はどんな無能をはやらせてくれる。え?」
「なにしろテレビはタダですから。日がな一日テレビをつけっぱなしにしてるの人は、病人や一人暮らしの老人など、社会的弱者です。それに聞いた話、精神病院で丸一日テレビを見るのは女性だそうです。普通ならパソコンネットはあるし、ビデオ見たっていいし他の事してます。そのうちデジタルの衛星放送が始まればチャンネル数二三百ですから変わってくるでしょう。ぼくはむしろそんな愚かな番組を制作している局側の連中が世間よりいい給料を取っているのに腹立ちますね」
「うん。阪神の地震報道にも腹が立った。以前の湾岸戦争の踊らされ方で報道の無能は証明済みだ。もっと早く見切りをつけるべきだった。もし君に達成したい政治目的があるなら政治家になるよりテレビ局のトップに立つ努力をするのが早道だろう。今のテレビ番組はバカが作りバカが見る。サティアンとか本部とかにうじゃうじゃ集まるのはウジかシラミ、リポーターなどクソ蝿だ」
クソ蝿発言は食後である。社長は四季のヴァージョンを持つCM制作を年一回に減らすと言いに来たのだった。社長側の宣伝部が清原側の課長に電話し済んでいる用件だけれど、清原のロケ地ハンティング旅行の後、その土地の気候風土習俗人品を話させるのはいつものことだった。この日社長は言葉尻に清原を自社に招く配慮を見せた。六月の株主総会を前に辞任しのんびり自由人の生活をするのだと言う。買いかぶられた清原は面映い、今抱く構想は可能性の殺人だ。
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