機械仕掛けの聖母

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 意味がわからない。  と、春子が電話を切り、話しかけた。 「頭脳以外が人工的に強化されたサイボーグの完成そのものが、厄介なのよ」 「なんで?」 「人類は、いまだ、人間の頭脳以上の知性を人工的に作ることはできないの」  こんなアタマでも、画期的なことになるのか。科学ってのは、ほんと、気が利いて間が抜けてやがる。   「なあ、春子。南の島にでも逃げようぜ」  ボクはゆっくりと話した。 「どうやって? あたしたち、国際手配されてるのよ。どこにも逃げられないワ」 「海をさ、泳げばいいじゃないか。ボクが連れていくよ。そのくらいの筋力、ボクは身につけることができないのかな?」  春子は、穏やかに笑う。 「そうね。逃げましょう。どこまでも」  春子は左腕でやさしくボクを抱いた。 右腕で抱いても構やしないのにと思った。                   (了)
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