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その後、雷也が仕事に行くと言うので、バタバタと用意してマンションを飛び出した。
車の中で、寒田が今日のスケジュールを伝えていたが、分刻みで深夜までぎっしりで関係ない椿でさえ聞いただけで倒れそうな内容だった。
そんなに忙しいなら、昨日みたいな偶にあるようなオフぐらい、あんなことを朝までせずに寝ればよかったのでは、と椿は青ざめる。
それでも、盗作だと一方的な理不尽な対応をせず会いに来てくれたことは嬉しかった。
それがこんなことになるとは思いもせずに。
そんな事とは露知らず。サングラスとパーカーで顔を隠した雷也は、窓に頭を押し付けるように不機嫌な顔で眠っている。
「では、また私の方から連絡したしますので」
「はい」
念には念を入れてか、駅の裏口に降ろされて、そう告げられる。
少し椿は、不安はあったが、ただ雷也と離れたくない一心で頷く。
もしまた盗作されたら?
盗作された原因は?
――誰が、どんな目的で。
考えながら歩き出した椿は、腰の痛みに気づき頬を染めた。
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