第1章

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 切り裂きジメジが皆から、怖がられるようになったのも 元々は誰かが、悪かったわけじゃなかったんです。  ジメジはステスという、可愛らしい白色の恋人と二匹で 沢の奥に住んでいたカニでした。ジメジは灰色と茶色が、 マーブル模様みたいに、濁らせたビードロのキャンデーの 玉のようには、あまり奇麗なカニではありませんでした。  でもステスは、そんな事よりもジメジの大きなハサミが とても立派で嬉しいのと、喜んでくれました。  だからジメジも少し、強がってみせながらですけれど いつもハサミで沢の皆を、僕が強くなって誰でも助けるよ。  ステスが漁師に捕まってしまったのは、半年後の事。 ジメジが沢山の藻を集めて、巣に戻ると近くで小魚が わいわいと騒いでいて、ジメジを見つけると皆が 近くへ寄ってきて、ステスが人間に捕まった話をしました。  大急ぎで横へ走った。けれど逃げられなかったんだ。 皆は水へ逃げなさいって、怒鳴ったけれど。ついつい、 ステスは横へ走ってしまって、それで逃げられなかった。  追いかければ間に合うかも。ジメジのハサミなら網を 破れるかもしれないよ。皆がジメジを応援したので ジメジも大急ぎで、魚達に教わった方向へ追いました。  でも沢を抜けて藪を潜って、カニの隠れ道を早足で ようやく人里に出た時、水路を通って最初の民家へ こっそりひっそり、入ってみました。ジメジはハサミが とても大きくて自慢だったので、走るのは遅かったのです。  白で奇麗な甲羅だった、恋人のステスが熱い熱いお湯で 真っ赤になって死んでいました。漁師の男が野菜を料理する その隙をついて、真っ赤なステスに近寄ってみました。 話しても撫でてあげても、ステスはもう起きませんでした。  ジメジは悲しくてボロボロと泣きました。余りに泣くので テーブルから涙が零れ落ちました。それに気付いた漁師は おお、今日は二匹もカニが獲れるとは、ついているなぁ。 そう喜んだ直後です。  ジメジの涙はブクブクと泡になって、濁ったジメジの色を 映し出しながら、ビードロ玉が大砲の弾のような鈍い色に 染まっては部屋一杯に埋め尽くして、どんどん玉は濁ります。 漁師は、なんだこんな泡なんかと、フライパンを振って 泡をかき消そうとしました。  けれども泡を吹き飛ばす度に、漁師は何か恐ろしい気がして 泡の中を、ようく眺めてみました。突然、泡の中から漁師の
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