第1章

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倍はありそうな巨大な、カニのハサミが飛び出してきて フライパンを、ちょん切ってしまいました。  呆気に取られて、立ちすくんでいた漁師はいつのまにか カニの泡に包まれて、キャンデーのようにペロリ。  料理が苦手なジメジとしては、不味い駄作の味でしたが 人間の3倍も大きくなって、怒りに怒ったジメジは静かに ステスを大事に、泡で包んで民家を出て行きました。  この話は村中で大騒ぎになって、山の猟師で鉄砲が得意な ヘテロトーレさんが、獰猛な犬を二匹も連れて村の皆の先頭で 凶暴な化け物だから、はぐれるんじゃないぞ、退治するんだ。 どこへ隠れたって、俺の犬は鼻が凄いんだ。見つけてやるぞ。  でも、ジメジは沢に戻っていませんでした。 沢へ通じる細い細い、川の水で泡を沢山作って、森の入り口で 逆に待ち構えていました。その泡の山は砦のようでした。 人間どもを全部ちょん切って食ってやる。ジメジはもう、 そんな事しか考えていませんでした。ステスを抱きしめながら。  そうとは知らずに勇ましく、化け物退治に森へ入った人間は 次々と泡に閉じ込められて、片っ端から食べられてしまいました。  火を使って料理出来ないジメジは、食べる前に必ずハサミで ちょん切ってから食べるのです。  但し、ジメジを見て逃げ出した、二匹の犬だけは追いかけずに 許してやったのです。犬も火を使うことが出来ませんから。  ジメジの噂は隣村にまで広がって、馬に鞭をビシビシ打つ 藁束を運ぶ馬車の男も、散々叩かれて食われていました。  旅人が道の途中で、ネズミを叩き殺したのを見つけた時は ジメジの大きなハサミで、旅人がぺちゃんこにされました。  更にカニのお化けを退治する為に、偉い司祭様も来ましたが その姿を見ただけで、何もかも投げ捨てて逃げ出しました。 もう人間にはジメジに怯えるばかりでした。  どういうわけか、人間でも小さい子供達は大人たちに森へ 入ってはいけないと言われても、ジメジを見てみたくて 朝早くに覗きに行きました。子供達はお化けが怖いはずなのに 何故か平気な気がしたのです。子供達は以前、沢に泳ぎに行って まだ小さいカニだったジメジとステスが、仲良しだったのを 憶えていました。 ジメジはいつでも起きていて、眠りませんでした。 ただ子供達をジロリと睨みます。それだけで特に何もしません。 でももっと近づこうとすると、急に泡を一杯にブクブク出して、
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