ロドン~魯鈍~

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いつの間に眠りについたのか、僕はまた紫色の草原に佇んでいた。空は同じ緑色で、そしてまた、四十五度の角度で、梟が僕を見ている。覗き込めば、色々な世界を映し出してくれそうな、そんな透き通ったビー玉の目で僕を見ている。澄み切っていて、全く汚れのない感じが不愉快で、とても鬱陶しい。飛び立とうと羽を羽ばたかせるので、皮肉だが、孤独を感じないように、怖くならないように、僕も共に空を飛ぼうと思った。脚と身体が宙を浮き、地面と程近い、低い、低い場所を僕は飛ぶ。恐れないよう、遅く、遅く飛ぶ。翼なんてない。飛びたいから飛ぶ。飛ばないといけないから飛ぶ。そこに自由さはない。走った方が早いスピード。それでも、飛びたいから飛ぶ。飛ばないといけないから飛ぶ。やっぱり、自由さはない。突き刺すような草から、必死で自分を護る。梟を見失わないように、必死で顔を上げる。見上げるのは好きじゃない。だって、怖いじゃないか。ほら、魔女の様な顔をした月が、僕を見て笑っている。僕の哀れな姿を見て、小馬鹿にしたように、ニヤリと笑っている。堪え切れず、鼓膜が破れそうなほどに大声で笑っている。僕ガ悪イ。僕ガ悪イ。笑ワレル僕ガ悪イ。ソンナ存在ガ悪イ。僕ハ笑ウヨ。僕モ笑ウヨ。 ―――一人ニシナイデ。一人ニシナイデ。 一人ハ、コワイ。 一人ハ、サミシイ。 ダカラ見テ…。 此所ニイルヨ、此所ニイルヨ…。 存在スル意味ヲ、奪ワナイデ…。 生キテ来タ証ヲ、消サナイデ…。 煩い、煩い、黙れ、黙れ…。耳を塞ぎ、僕は飛ぶのを止めて蹲った。手で顔を覆う。聞きたくない、聞きたくない、見たくもない、見たくもない。だって、怖いじゃないか。恐る恐る、指の隙間から目を覗かせると、名も分からない変な生き物達が、パレードをしている。楽しそうに、賑やかそうに、ピーパラ、パラリン、パラリン…パレードをしている。僕はまた耳を塞いだ。世界が無音になる。顔がないような顔でこっちを見て、音もなく、笑っている。僕の哀れな姿を見て、小馬鹿にしたように、顔がないような顔で、ニヤリと笑っている。コワイ、コワイ…。僕は逃げた。必死で逃げた。逃ゲルノ?マタ、逃ゲルノ?飛んでいるのか、歩いているのか、立ち止まっているのか、分からない、分からない。僕はどうしたい?逃ゲルノ?マタ、逃ゲルノ? ―――一人ニシナイデ。一人ニシナイデ。 一人ハ、コワイ。 一人ハ、サミシイ。 ダカラ見テ…。
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