プロローグ

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冬の朝、黒いコートを着てマフラーと手袋をつけた俺は家を佐々峰(さざみね)高校へ向かう。 外は雪が降っていた。 道路には少し積もっている。 ザクザクと雪を踏みながら学校へ向かう途中、すれ違う人は必ず振りかえった。 雪が俺を輝かせてる。 そんなことを思った自分が恥ずかしくなって顔を赤らめる。 すると、バタバタバタバタ子さん、と後ろからかけてくる音が聞こえた。 「帝(みかど)ーーー!!!!」 俺の名前を躊躇なく大声で呼ぶようなやつは1人しかいない。 俺は後ろを振り返った。 だけど、目の前には誰もいない。 「うごほっ!」 声のするほうへ顔を向けると 1人の小さな男がうつ伏せになっていた。 「……。大丈夫かよ、浩二(こうじ)」 こいつは 富永 浩二。 あとから登場人物紹介があるが、ざっくり紹介しておくとしよう。 浩二は俺の幼なじみで、小中とずっと一緒の友達だ。 女みたいな容姿だけど、これでもcryの総長である。 あと、言っておくことは…。 あぁそうだ。こいつも腐男子。 "こいつも"って言った通り、俺も腐男子だ。 腐男子歴は二人とも3年だ。 まだまだ新人ってとこだな。 紹介はこのへんにして… にしても、痛そうだな…。 見事に雪で滑って、コンクリートに鼻を打ちつけたらしい。 浩二は表面についた雪を払いながら立ち上がり、ブイサインをして歯を見せて笑った。 「大丈夫!!!」 つられて俺も笑う。 周りの人はその様子に顔を火照らせた。 「相変わらず浩二は背が小さいな。何センチだっけ?」 「俺は標準の170cmなんだよ!お前がデカイだけだ!」 「すまないな。俺が完璧で。」 185cmの俺は本当に申し訳なさそうな顔をして浩二に謝った。 「ぶっとばすぞ、クソミカン。」 「ミカンやめろ。ミカドだ、俺は。」 だいたい、俺は柑橘類が苦手なんだ。 そんなたわいもない言い争いをしながら俺達は同じ目的地へ向かった。
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