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この不況が続くご時世に、こんな……。
「ふう……、お腹いっぱいね」
「美味しかったねー」
あ、そういえばドレス着たまんまやった。
悠緋も正装のまま。
こうして見てると、極々普通の女子高生のあたしには勿体ないくらいカッコいい。
従兄やなんて思えないくらい、色気あるし、肌の手入れなんて普通の洗顔フォーム使ってるだけやのにツルツルしてるし。
過保護なんが玉に傷やけどさ。
「なあ、こんな高そうなホテル大丈夫なん?」
「クリスマスだもん。これくらいはね……」
あたし、別に普通に家で過ごすだけでも良かってんけど……。
慣れてへんからかな?
反対に嬉しかったりするんは、やっぱあたし乙女なんかなー?
「ひまちゃん?」
「なに?」
不意に呼ばれて、内心でびっくりする。
「もっかい、踊ろっか?」
予想外なこと言われて意外に思ったけど、あたしは快く答えた。
ピアノを自動演奏にして、悠緋と寄り添う。
「へへっ」
「なぁにー?」
つい、嬉しくて笑みが溢れた。
「なんでもない」
悠緋もクスッと笑って、リズムに合わせてゆったりと踊る。
いつも一人で過ごしてたはずのクリスマスが、あたしの中で色づいていく。
こんな夜は、生まれて初めてやった。
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