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「俺も、君に会ったことあんねんよ」
「そうなんですか?」
「こいつがミルク作ってる間は、俺があやしてたの。
泣かれたの思い出すわー」
「泣かれてたんかいっ」
そう笑う久島さんは、潰れかけた農家の跡継ぎやったみたいで、悠緋に声掛けられてからは遠方からお客さんが来るほどまでに軌道に乗ったらしい。
我が家に来る野菜の一部は、久島さんからも届いている。
重役の人も、気さくで仲が良さそうに見える。
悠緋、こんな人らと一緒に仕事してんや。
学校では女装してなりきって、話し方も仕草もそれっぽくしてるけども。
「せやから、ひまは俺だけ言うてたやんか」
ふざけ合ってるとこ見たら、クラスの男子らと何ら変わりなく見える。
「ひまちゃーん、ここに美味しいのあるから食べにおいでー!」
ルポ・カフェのお母さん的存在な、岸部さんが手招きしてる。
「じゃあ、あたしあっちに行ってます」
「行っといで」
ここの店長の宇治野さんが、快く言ってくれた。
「こんな獣だらけの中やけど、今夜は聖なる祝杯の日やからね。
たっぷりご馳走作ったんや、いっぱい食べてってな」
「ありがとございます!」
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