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「……っ」
悠緋に言おうか……。
でも、言ったところでどないする?
抜けようにも抜けられへんし、そもそもみんなこの中から抜けようって同じ考えやねんから、抜け道あったらとっくにそっち行ってる。
そう考えてる内にまた人混みの流れは動き出す。
今度はかなり進めそう。
「ひま……っ」
思考が麻痺しかけて、悠緋の声に気づかんかった。
足の力が入りきらんくて、倒れそうになったとこを力強く支えられる。
悠緋の匂いやない。
悠緋よりは細いみたいやし、男の人には変わりなさそう。
右の腕を相手の肩に回されて、反対の腰をグッと寄せられる。
「すいません、通してください。
怪我人です」
……静流?
繰返し断りを入れて、やっと抜けたらしい。
歩くペースがスムーズになったから。
「どうされました?」
「人混みに酔ったみたいで……」
若い女の人の声、多分巫女さんのバイトかな。
「彼女さんを中へ」
「向日葵、靴脱げるか?」
耳元で囁かれるも、気持ち悪くて小さく頷くのが精一杯やった。
やっと脱げたかと思うと、とっくに脱ぎ終わった静流に抱き抱えられて奥へと案内されるまま。
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