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その日は悠緋の授業はなくて、一日はあっという間に過ぎた。
「真相と結婚するかしないか、はっきり聞いてきて!」
放課後帰ろうとしたあたしに、ファンの子が手を合わせて頭を下げてきた。
なんであたしが……、って言いたい気持ちを抑える。
どうあれ、あたしも悠緋の口からちゃんと聞きたいから、聞くに変わらんけど。
「來間さん、一緒に住んでんやろ?
昼休み聞いたけど、本人にはぐらかされて……」
「悠緋が?」
はぐらかした?
「……わかった」
あたしに託した女子達は、ひとまず退散。
廊下には、あたしと杏子だけになった。
「ひま?」
覗き込まれて、我にかえる。
今日一日、何回同じことあったんやろ。
でも、聞くの怖いな……。
「ごめん、杏子。
あたし、寄るとこあるから先に帰ってもらっていい?」
「……無理すんなよ」
杏子は理解したように笑って、小さな溜め息と一緒にそっと頭を撫でた。
「ありがとう。
また、LINEする」
「うん。
ほな、また明日な」
「またね」
杏子が角を曲がるまで見送って、あたしも歩き出す。
行く先は、杏子が思ってたのも違う場所。
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