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「失礼しまーす」
「来ると思った」
開口一番にそう言ったのは、捺月先生。
その分じゃ、悠緋の噂は耳に入ってるみたい。
ベッドは空っぽ、あたし以外の生徒は居なかった。
「先生……、あの噂って、ほんまなんかなー?」
ソファーに腰を下ろして、背後に居る先生に聞いてみる。
ほんまは、カフェ行っても良かってんけど……。
あたしと悠緋とのこと知ってるし、捺月先生は学校の保健医やから、誰かに聞かれるリスクもある。
けど、この先生取り繕うのせーへんから、確かな答えが見つかりそうな気がする。
「は?」
「悠緋のお見合い」
「あいつから、なんも聞いとらんのか?」
「うん。
今朝学校に来て、悠緋のファンに聞かれて知った」
すると、先生は呆れたように重い溜め息を漏らした。
「あんのドアホ……。
來間、お前それは本人に聞け」
「でも……」
「ええから」
それ以上、何も言うことはなさそうやった。
本人に聞くのが怖いから、こうして遠巻きに聞いてんのになぁ。
「さよならー」
「はい、さよーならー」
そのまま家に帰ったけど、部屋の中は真っ暗やった。
ドアを開けた瞬間、フラッシュバックのように前の家を思い出す。
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