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何年も帰国してないパパ。
たまにしか帰ってこないママ。
帰ってきてても、生活リズムのズレですれ違い。
「ただいま」と言う相手が居ない、誰も居ないことを示す真っ暗な部屋。
あの家は、確か余所の家族に貸してるんやっけ?
きっと、今頃は賑やかなんやろな。
夕飯作って、みんなで食卓囲んで、今日あったこと話し合って……。
パパとママの子に生まれたくなかったとかやなくて、もし一家が揃って団欒な家庭で育ってたら、あたしはどんな子に育ってたんやろ?
「ダメだ……、家に入れない……」
そのままドアを閉じて、鍵を閉めた。
下に降りると、管理人さんにまた鍵を預ける。
「どうかされたのですか?」
「いえ……、用事を思い出して」
「……お気をつけて」
あたしは、そのままカフェの方まで何も考えんと歩いてった。
案の定、ここでもみんなの目を引いた。
そりゃ、そうだ。
制服着たまんまの女子高生が、夕方のこの時間に来るなんてあんまりない。
「どないしたん、ひまちゃん?」
店長の辻鷹さんが、すぐに声を掛けてくれた。
「今、家に居たくなくて……。
少しの間だけ、ここに居たら気が紛れると思って」
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