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着弾の位置と周りの地形から推測して、射手は、百メートルほど離れた、向かい側の丘の斜面から射っているようだ。
罠の可能性もあるが、小屋の前に停めた車は見棄て、裏口から出て、大回りして逆襲するほかに、生き残る道はないだろう。
(――と、その前に確認しなくちゃ)
依頼者は、確かめそこねたフォトスタンドが怪しい。と言っていた。
ラックにあったフォトスタンドを、フレームから外すと、依頼者の言ったとおり、CD-Rが滑り落ちたので、写真に一瞥(いちべつ)をくれ、一緒にポケットに入れる。
テーブルを移動させ、ショットガンを丘のほうに向けて固定する。フィッシングベストの背中についていた、ランディングネットの太い紐をほどき、オイルを染みこませ、弾丸を込めたショットガンまで、導火線がわりに2メートルほど這わせた。
導火線に点火すると、由香は、ハンティングジャケットを羽織り、こっそり裏口から外に出た。
素早くブッシュに駆けこむと、身をかがめながら、ジリジリと丘に向かって進む。
小屋から十メートルほど離れたところで、激しい銃撃音が炸裂した。これで小屋にいると錯覚してくれるはずだ。
案の定、丘の方からタン、タ、タンと、銃声が弾ける。
サプレッサーは装着していない。
仮に誰かが聞いたとしても、猟期なので、通報する者はいないと踏んでいるからだろう。
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