KISS OF A BLACKBERRY

4/8
前へ
/8ページ
次へ
着弾の位置と周りの地形から推測して、射手は、百メートルほど離れた、向かい側の丘の斜面から射っているようだ。 罠の可能性もあるが、小屋の前に停めた車は見棄て、裏口から出て、大回りして逆襲するほかに、生き残る道はないだろう。 (――と、その前に確認しなくちゃ) 依頼者は、確かめそこねたフォトスタンドが怪しい。と言っていた。 ラックにあったフォトスタンドを、フレームから外すと、依頼者の言ったとおり、CD-Rが滑り落ちたので、写真に一瞥(いちべつ)をくれ、一緒にポケットに入れる。 テーブルを移動させ、ショットガンを丘のほうに向けて固定する。フィッシングベストの背中についていた、ランディングネットの太い紐をほどき、オイルを染みこませ、弾丸を込めたショットガンまで、導火線がわりに2メートルほど這わせた。 導火線に点火すると、由香は、ハンティングジャケットを羽織り、こっそり裏口から外に出た。 素早くブッシュに駆けこむと、身をかがめながら、ジリジリと丘に向かって進む。 小屋から十メートルほど離れたところで、激しい銃撃音が炸裂した。これで小屋にいると錯覚してくれるはずだ。 案の定、丘の方からタン、タ、タンと、銃声が弾ける。 サプレッサーは装着していない。 仮に誰かが聞いたとしても、猟期なので、通報する者はいないと踏んでいるからだろう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加