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小屋の裏手は、エゾマツや、カエデの森が続いている。
由香は、ブッシュに分け入ると、すぐに獣道を見つけ、なるべく茂みに触れないように進む。
このあたりには、ポイズンオーク(漆の一種)が自生するので、露出した肌に触れると、酷いかぶれで、厄介なことになるからだ。
下生えのなかに、たわわに実るブラックベリーを見つけ、思わず口に入れると、甘酸っぱい香りが口にひろがった。
先ほどの銃撃で、おおよその位置は掴んでいる。由香は、大きく斜面を迂回しながら、敵の姿を探す。
そのとき二十メートルほど下方に、不自然な動きを見つけた。
迷彩服を着た敵が、物陰を伝わり、ジリジリと由香がいた小屋の方に向かっていた。
「動かないで!
ライフルで狙ってるわよ」
ウィンチェスターのボルトを引きながら、由香が叫ぶ。
「銃を下に置いて……オーケー。手を上げて、ゆっくりこっちを向きなさい」
敵は、ナイツ・アーマメント製のアサルト・ライフル、M-4 SR15を、ゆっくりと置いた。軍用のSR16の民間モデルだ。
そして、由香の方に向き直り、アーミーキャップを外す。
プラチナブロンドの髪が、陽光に輝いた。
「シンディ……!」
由香が絶句した。シンディ・マクラフリン。
迷彩服を着た女は、由香の大学時代のルームメイトだった。
ブロンドの髪。モデルも顔負けのスタイルに、いかにもアイリッシュらしい、意志の強そうな青い瞳。
シンディは、にっこりと由香に微笑んだ。
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