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――六年前。
「なんでよユカ! どうして出ていくの?
わたしのことが嫌いになったの?」
「そうじゃない。けど……シンディ。ごめん」
ユージーンは、州で三番目に大きな都市。オレゴン大学の街である。
昔からゲイには寛容な街で、レズカップルを白眼視する住人はいない。
ふたりは、大学構内の掲示板の、ルームシェアの貼り紙を介して知り合った。シェアは、アメリカの学生間では、比較的ポピュラーなスタイルである。
由香は、親の遺産で、フライフィッシング、ハンティング、コンバット・シューティングを趣味に、気楽なキャンパスライフを謳歌していた。
一方シンディは、子どもには、まずナイフの研ぎかたを教えるようなこの州で生まれた。
初めてライフルを撃ったのは、八歳のときだ。
ふたりは、週末のたびにキャンプや釣りに出かけ、やがて、愛を確かめあうようになった。
「だったら、あやまったりしないで!」
「ごめん。あたしは、あたしが何を出来るのか、それを確かめてみたいだけ。
あなたが嫌いになったわけじゃないの」
「わかった。さよならユカ……」
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由香は、ウィンチェスターを構えたまま、斜面を下りる。相手が元恋人でも、いささかも油断しない。戦場で身についた習慣だ。
「シンディ、久しぶり。
会いたかったわ。相変わらず綺麗ね」
「あなたも素敵よ」
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