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「この茶番は、あなたが仕組んだのね……でも、なぜ?」
「あなたが好きだったからよ」
そう言いながら、シンディは、ジャケットの懐から、素早くシグ・ザウエル P-228を抜いた。
由香は、一瞬早く、ライフルから手を離し、ヒップホルスターからグロックを抜き射った。
シンディがトリガーを引く前に、由香が放った弾丸が腕を掠め、シグが弾き飛ばされた。
「どうして外したの?
あなたの腕なら殺せたはずよ」
「なんでそんなに死に急ぐ必要があるの?」
「わたし……病気なの。もう長くないって宣告された……
どうせ死ぬなら、あなたに殺してほしかった」
「お断りよ。あなたは逃げてるだけ。同じ死ぬなら誇りを持って戦って死になさい。
あたしが最後まで見届けてあげる」
由香は、シンディを抱きしめると唇を寄せる。
お互いに激しく相手を貪り、キスが終わるとシンディが言った。
「いつ、おかしいって気付いたの?」
「そうね。その前に……
隠れてないで出て来たら?」
由香が背後の茂みに向かい、声をかけると、ひとりの男が姿を現した。
由香に仕事の依頼をした男だった。
「兄さん!」
シンディが小さく叫んだ。
「お兄さんを利用して、あたしに依頼したのが失敗だったわね。彼は、あなたに死んでほしくなかった……だから細工したの」
由香がシンディに写真を見せた。
そこには、優しそうな父親と一緒に、幼いシンディと兄が写っていた。
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