仮面の下に、伝う涙

3/25
前へ
/107ページ
次へ
「一華ちゃん、飲んでるー?」 「はい、頂いてますよ」 みんな程よく酔い、緊張感や変なしがらみに捕らわれることなく。 いい感じにオープンになりつつ、ハッチャケていた。 洋風居酒屋の一室。 8畳ほどの広さの個室には、男女がテーブルを挟み交互に腰掛けている。 部屋の電気は温かみのある暖色系で、それがまた雰囲気を良くしていた。 居酒屋だけあってどれほど騒いだって、誰も注意なんかしない。 男子は3人、女子は4人。 どうやら1人遅刻してくるみたいだ。 隣であたしに距離を詰める男の名前はヨシキ。 年も詳しい事も知らないけれど、ルックスはまぁまぁだし。 まあこの人でいいかなと、ウーロン杯に手を伸ばしながら気を許していた。 「一華ちゃん……この後2人で抜けない?」 耳元でそう囁くヨシキ。 口元はいらやしく緩んでいて、下心丸見えだった。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

337人が本棚に入れています
本棚に追加