仮面の下に、伝う涙

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「一華じゃーね」 ナナの浮ついた声が背中に届いたけれど、振り向く事はしなかった。 隣にいるであろう須藤さんを、視界に入れなくなかったから。 今はプライベートとはいえ、一応職場関係者の人にこんな場面をあまり見られたくない。 「どこ行こっか?」 飲んでいた居酒屋の道路を曲がり路地裏に入ると、どこか期待の色を含んだ声を発したヨシキ。 どうせラブホ行きたいんでしょ。 見え透いた回りくどい事、言わなくていいのに。 利用するのは───あたしなんだから。 お望み通り、言葉にしてあげる。 「2人っきりに……なりたいです」 視線を自分のヒールに移して、あくまでも恥じらう女を取り繕う。 「じゃあ……あそこのホテ─」 「キャ…っ」 至近距離にヨシキの顔があったはずなのに一瞬で遠く離れ、腕には軋む感触を感じた。
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