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「……す、どう…さん?」
驚いて後ろを仰ぐと額に汗を滲ませ、眉根を寄せ険しい顔をしている須藤さんがあたしの手を握っていた。
「須藤?何だおま─……」
ヨシキが嫌悪を露わにし、足を一歩前に踏みだした瞬間。
「え……っ、ちょ」
腕を急激に引かれ、あたしの足はそれに付いて行くように自動的に動き出す。
視界に映るのは風に揺れる、漆黒の髪。
カツンカツンとヒールの音が、やけに耳に響く。
何が起こっているのか理解出来ないまま、あたしは須藤さんの腕に引かれ続けた。
「はぁはぁ……」
肩で大きく息をして、乱れた呼吸を正そうとする。
普段から運動不足の体は、たった200メートル走った位で悲鳴をあげた。
「ごめん……宇佐美さん」
そんなあたしの様子を見て眉尻を下げ謝罪する、強引男。
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