338人が本棚に入れています
本棚に追加
『なに?』と聞くほど鈍感じゃないし、そんなにあたしはヤボじゃない。
そんな改まってから、手つなぐとか……
ちょっと恥ずかしいじゃない。
否応なしに手をかっさらってくれた方が、どれだけ楽か……
時間を置けば置くほど羞恥心が伴い、手を差し出しずらくなる。
あたしは一回視線を外して唇を少し噛み締めてから、ゴツゴツとした手のひらに自分の手を重ねた。
「行きましょ」
フッと柔く笑う須藤さんに包まれた手は、暖かくて心地良くて。
雲の上を歩いているような、フワフワした気分になった。
ラーメン屋があった通りとは違い、目的地までは賑やかな大通りを渡るらしい。
行き交う人達は酔っ払いやカップル、多種多様。
初々しい中学生カップルみたいなあたし達を、誰も気にする人はいなかった。
「……宇佐美さん」
「はい?」
肩を並べて街中を歩いている途中、隣からごもついた声がかかる。
最初のコメントを投稿しよう!